原田マハは美術ものがやはり秀逸 『モダン』感想
こんにちわ。ドラマ大好き、小説も好き、マー子です。
今日はドラマではなく、原田マハ著『モダン』の読書感想を。
読書は基本的に文庫本派ゆえ、文庫化されて手にとりました。
原田マハさんの文章自体がまさにモダン
原田マハさんの小説には、アートサスペンス『楽園のカンヴァス』で初めて触れましたが、あまりにもの面白さにひさびさに心が震える体験をした衝撃作でした。
で、スピーチライターのお仕事青春小説『本日は、お日柄もよく』や、田舎での米づくを通した心の再生を描く『生きるぼくら』を読んでみたものの、『楽園のカンヴァス』ほどの衝撃がなく…
しばらく原田作品読んでなかったのですが、この『モダン』は、美術館「MoMA」を舞台に描かれているということで読んでみました。
作品の内容は、、、
”モダン・アートの聖地、ニューヨーク近代美術館ーMoMA。ピカソ、マティス、ルソー、ワイエスなど20世紀絵画の巨匠たちの作品が綺羅星のごとく並ぶこの美術館を舞台に、アートを愛するさまざまな人の夢や苦悩、人生の決断を描く。”────Naked Maha | 原田マハ 公式サイトより
ということで、美術館で働く人たちそれぞれのエピソードが5編。
アート作品と登場人物たちのニューヨークでの都会的な暮らしをベースに描かれる文章は、知的な空気がただよっていてしゃれている。つまりは、モダン。
登場人物たちの心の機微を丁寧に描きつつ、アート作品がうまく物語のなかに組み入まれていて、いつのまにかアートへの関心を掻き立てられます。
MoMAを舞台に、描かれている時間が少しずつ違うのも面白い。
東日本大震災や同時多発テロに絡めたエピソード、MoMA初代館長に絡んだ数十年前のエピソードなど。
ひとくくりに言えば現代なんだけど、そのときどきに起こる災害や事件といった出来事に人々は翻弄されながら生きていて。
そして、アート作品も時代の影響をけて生まれている。
だけど、作品自体は時間が流れていくなかでも、そこに存在し、そしてこれからも存在し続け(それは美術を愛するひとたちの手によって守られながら)、人々に影響を与えてゆく…
そんなアートの力に思いを馳せずにはいられません。
やっぱり、MoMAに行きたくなる
アンドリュー・ワイエスの『クリスティーナの世界』、パブロ・ピカソの『アヴィニョンの娘たち』、マティスの『浴女と亀』など、魅力的な作品がたくさん登場する本作。
読んでいると登場する作品たちを観たくなるのだけど、それ以上にMoMAという場所に行きたくなる。MoMAという空間でその名作たちを観たくなる。
短編のなかで私がいちばん印象的だったエピソードは、『私の好きなマシン』。
今でこそ、デザインや建築、写真がアートの一部だというのは当たり前の概念になっていると思うのだけど、実はそのアイデアをつくり上げたのがMoMA初代館長のアルフレッド・バーという人物。
『私の好きなマシン』では、アルフレッド・バーが1934年に企画した「マシン・アート」展について描かれている。
このなかのアルフレッド・バーの台詞がとっても素敵。
「僕たちの知らないところで、僕たちの生活の役に立っているもの。それでいて、美しい。僕は、そういうものを『アート』と呼んでいるよ」
このエピソードの主人公は、この言葉に感銘を受けて工業デザイナーになる。
アートって何?ってなると、なんだか難しいなーとなっちゃうけど、アルフレッド・バーが語るこのアートの概念は私の胸にもスッとはいってきた。
人に美しいと思わせるもの=アートを見出し、アート愛する人たちがつくるMoMAという空間はきっと刺激的なものに違いないと思わせてくれる小説『モダン』。
原田マハさんの美術への造詣と愛があふれる作品のひとつではないでしょうか。
ところで、『モダン』のなかにもピカソの『ゲルニカ』がでてくるのですが、原田作品『暗幕のゲルニカ』が文庫化されました^^
ということで、次はそちらを読みたいなーと思っています!